インプラント治療適応の可否は、顎の骨の状態によって左右されます。加齢や歯周病などで顎の骨が足りないと、人工歯根を適切に埋め込むことができないからです。
その際、有用なのが「骨造成(こつぞうせい)」という、足りない骨を造り出す方法です。
今回はそんなインプラント治療で骨が足りない場合の骨造成の種類を宇都宮市砂田町のココ歯科クリニックがわかりやすく解説をします。インプラントの検査の段階で骨不足を指摘された方は参考にしてみてください。
目次
■インプラント治療の骨造成の種類について
インプラント治療で行われる骨造成の主な種類としては、GBR法、ソケットリフト、サイナスリフトの3つが挙げられます。それぞれの特徴や適応症、治療期間などを見ていきましょう。
【骨造成の種類1】GBR法
GBR(Guided Bone Regeneration)法とは、日本語で骨誘導再生法と呼ばれる骨造成です。顎の骨の欠損部に自家骨や人工骨、骨補填材などを填入してメンブレンと呼ばれる特殊な膜で覆います。メンブレンを使用する理由は、歯ぐきではなく歯槽骨の再生を優先したいからです。
例えば、顎の骨の欠損部に骨補填材などを填入しただけでは、骨の再生よりも歯ぐきの再生が優先されてしまう(歯ぐきの再生の方が早い)ため、骨欠損を回復できません。
そこで施術部位をメンブレンで覆うと、特定の細胞が流れ込むのを防ぎ、歯槽骨の再生を誘導できるのです。「骨誘導再生法」という名前は、この点に由来しています。
◎GBR法の適応症
GBR法は、主に下顎の骨の高さや幅が不足しているケースに適応されます。つまり、下の歯のインプラント治療で骨が足りないケースに使われることが多いと言えます。ちなみに、上の歯のインプラント治療で骨が足りないケースは、後段で解説するソケットリフトやサイナスリフトが選ばれやすいです。
◎GBR法の治療期間
GBR法で骨が再生するまでに要する期間は、4~6ヵ月程度です。骨の不足の程度によって、治療期間は大きく変わります。
また、GBR法は、人工歯根であるインプラント体の埋入と同時に行うパターンと別々に行うパターンがあり、この点においても治療期間に大きな違いが見られます。
【骨造成の種類2】ソケットリフト
上の歯のインプラント治療で骨が足りない場合には、「上顎洞底挙上術(じょうがくどうていきょじょうじゅつ)」と呼ばれる骨造成が適応されます。
上顎洞底挙上術とは、上顎骨の直上にある上顎洞の底を文字通り押し上げる術式で、ソケットリフトとサイナスリフトに分けられます。どちらを適応するかは、骨の不足量で決まります。骨不足が比較的軽度であればソケットリフト、中等度から重度であればサイナスリフトが検討されます。
◎ソケットリフトの適応症
ソケットリフトは、上顎骨の高さが3~5mm以上あるケースに適応されます。つまり、上顎洞との隔てとなる骨にある程度の厚みがあるケースは、ソケットリフトで対応できます。
◎ソケットリフトの手順
ソケットリフトは、インプラント体を埋め込む方向からアプローチするのが特徴です。
上顎洞へと向かって垂直的に穴を開け、シュナイダー膜という上顎洞の底に分布している膜を挙上します。そこに骨補填材を填入し、顎骨の再生をはかります。GBR法のような人工膜を設置する必要はありません。
◎ソケットリフトの治療期間
ソケットリフトもGBR法と同様、インプラント体の埋入と同時に行うパターンと別々に手術するパターンの2つに分けられます。ソケットリフトにかかる期間はケースによって変わりますが、数ヵ月程度が目安となります。
【骨造成の種類3】サイナスリフト
サイナスリフトも上顎洞を挙上するための骨造成で、治療目的はソケットリフトとほぼ同じですが、適応症や治療の手順、治療期間に違いが見られます。
◎サイナスリフトの適応症
サイナスリフトは、上顎骨の高さが3~5mmに満たない場合に適応されます。つまり、上顎洞との隔てとなる骨が大きく不足しているケースは、ソケットリフトではなく、サイナスリフトで対応しなければならないのです。
◎サイナスリフトの手順
サイナスリフトの適応症は、顎骨の高さが大きく不足していることから、垂直的なアプローチではなく、顎骨の側面から手術を行います。頬の側の歯ぐきをメスで切開し、骨造成のためのスペースを確保した上で骨補填材を填入します。切開した歯茎は縫合して手術を完了します。
◎サイナスリフトの治療期間
サイナスリフトは、原則として人工歯根の埋入手術と同時に行うことは難しいです。また、侵襲性の大きな手術となることから、サイナスリフトの治療期間は6ヵ月程度に及び、インプラントが可能になります。
■まとめ
今回は、インプラント治療で骨が足りない場合の骨造成について、宇都宮市砂田町のココ歯科クリニックが解説しました。
インプラント治療で骨が足りないと診断された場合でも、GBR法やソケットリフト、サイナスリフトなどに対応できる歯科医院なら、インプラント治療ができる場合があります。
ただし、骨造成は高度な治療法であるため、歯科医院選びは慎重に行う必要があります。また、骨造成でも対応できない症例があることもあらかじめ理解しておかなければなりません。