
治療の先送りと費用の見通し
歯の治療をあと回しにすると、むし歯などが進むにつれて処置の範囲が広がり、費用や通う回数が増えることがあります。ただし、受診したその場で高い治療をすぐに決める必要はありません。まずは保険診療でできる範囲を確かめ、検査の結果と見積もりを聞いてから治療の方法を選ぶ手順をお伝えします。一般的には、予算や予定に合わせて少しずつ進められるか相談できる場合があります。
この記事の要点まとめ
- むし歯や歯周病が進むと、治療する範囲やお金、通う回数が変わることがあります。いまの状態は、歯医者でみてもらってたしかめます。
- まず保険でできる範囲や検査の結果、見積もりをたしかめ、説明を聞いてから治療のやり方を考えられます。
- 歯を抜いたあとの治し方や追加の処置、合計のお金、治るまでの期間をたしかめ、予算や通える日に合わせて相談しましょう。
歯の治療を先延ばしにすると、費用や通院回数はどう変わり得る?
むし歯や歯周病が進むと治療する範囲が広がり、通う回数や費用が増えることがあります。ただし、どのくらい変わるかは、口の中をみてもらわないとわかりません。
しみる感じが落ち着いても、むし歯が治ったとは限らない
冷たいものがしみる感じが弱まっても、むし歯が治ったとは限りません。歯の中の神経が弱ったり働きを失ったりして、しみなくなっている場合もあります。強い痛みや歯ぐきの腫れ、発熱がある場合は、早めに歯科医院への受診を検討してください。
詰め物で済むか、歯の内部の治療が必要かで通院回数が変わる
むし歯や歯周病がどこまで進んでいるかによって、小さな詰め物で済む段階から、歯の中の神経をきれいにする治療、歯全体をおおう被せ物、さらには抜歯へと処置の範囲が変わります。受診をあと回しにすると急ぎの処置が必要になり、治療のその後の経過に影響することもあります。費用や回数は、診察を受けてから分かります。
歯が抜けたまま放置すると、後の治療の選択に関わることがある
抜歯後に歯がない状態を放置すると、噛む刺激が失われることで顎の骨(歯槽骨)が痩せて形態が変化し、その後の入れ歯やインプラントの治療が難しくなる場合があります1。周囲の歯が傾いて噛み合わせが乱れる原因にもなります。
費用が怖くて受診を迷うとき、何から確認すればいい?

歯医者にかかっても、その場で高い治療を決めなくてかまいません。まず保険でできる範囲をたしかめ、検査のあとに説明を聞いてから治療のやり方を選べます。
ポイント
初診時はまず保険診療でできる範囲を確認し、検査結果と費用の説明を聞いてから治療法を選べます。
費用が気になるときは、まず保険診療でできる範囲を確認する
治療費への不安や疑問は、歯科受診をためらわせる大きな要因になります2。すべての処置が公的医療保険で受けられるわけではありませんが、当院では、まず保険診療の範囲内でできる治療を丁寧に行うことを心掛けております。その上で、自費診療(自由診療)が必要だと判断した場合に選択肢をご案内しています。
たとえば白い被せ物にする場合、当院の料金(税込)は、奥歯・前歯のジルコニアオールセラミックスが160,000円、メタルボンドが135,000円です。奥歯のジルコニアプレミアムセレックは110,000円、浅いむし歯のセレックのセラミックスの詰め物は68,000円です。自由診療は公的医療保険が使えません。また、セラミックなどの被せ物は、強い力で欠けることがあり、削る量によっては神経に痛み(歯髄炎)が出ることもあります。また、インプラントについても、相談したその場で決断を求めることはありません。
症状の経過と予算の悩みを伝え、検査後に費用と期間を聞く
歯科医師との信頼関係を築き、不安を共有することは治療を進めるうえで大切です3。当院では、初診時にまず専用の個室(カウンセリングルーム)で患者様のお悩みや不安をじっくりお聞きし、レントゲン撮影や歯周病検査を行います。その上で改めて説明の時間を設け、初診時のデータをもとに治療内容・費用・期間を丁寧にお伝えしています。
目に見える症状だけで治療費が決まることはありません。詰め物が外れた時期やしみる感覚の経過、ご予算の希望をあらかじめ伝えていただくと、状況に合わせた説明を受けやすくなります。
画像を見ながらの説明や段階的な治療の希望は、予約時に伝える
お口の中の画像を見ながらいまの状態を知りたいときや、月ごとの予算に合わせて治療の順番を決め、少しずつ進めたいときは、予約や問診のときにその希望を伝えて相談してください。痛む歯や、毎日の暮らしで困っているところから先に処置できるかなど、くわしい対応は受診する歯科医院に確かめましょう。
抜歯でインプラントを勧められたら、すぐに決めないといけない?
抜歯後にインプラントを勧められても、すぐに決める必要はありません。骨の状態による追加処置や治療の流れを確認し、ほかの選択肢も含めて検討して構いません。
インプラントは相談の場で即決せず、小冊子も読んで検討する
当院では、大学病院の口腔外科にいた院長が相談の時間をとり、お口の中を見たうえで、治療の中身や費用、かかる期間、ご質問についてお話ししています。相談のあとには、院長がインプラントの特徴や治療の流れをまとめた小冊子をお渡しし、ご自宅で読んで納得してから治療を受けるようおすすめしています。
小冊子には患者様ごとの個別の見積額が載っているわけではありませんが、治療の基本的な仕組みを整理する材料になります。お口の状態や全身の健康状態によっては適応とならない場合もあるため、相談の場で即決せず、持ち帰ってゆっくりとご検討ください。
骨の状態によって追加の処置が必要かを確認する
抜歯後に顎の骨が吸収されると、そのままでは人工歯根を支えにくくなることがあります4。当院では、歯科用CTによる立体的な検査を行い、顎の骨の厚みや高さが足りない場合にはGBR(骨誘導再生法:骨を補う処置)を検討します。また、上顎の奥歯で骨が足りない場合には、ソケットリフトやサイナスリフト(上顎洞の底を押し上げて骨を補う処置)にも対応しております。
治療をあと回しにしたからといって、だれでも骨を補う処置が必要になるわけではありません。ただ、追加の処置があるかどうかで費用や治療の期間が変わるため、くわしい検査のあとに確かめてください。インプラントは手術が必要で、あごの骨の量やかたさに左右され、治療に時間がかかり、自費のため費用も高くなりやすい治療です4。
一般には、インプラントを入れるだけなら半年から1年ほど、骨を補う処置もするなら1年から2年ほどかかり、費用は1本50万円ほどに検査料などが加わることがあります5。当院の料金は、CT撮影・診断料が11,000円(2本目は無料)、一次手術と二次手術が363,000円、被せ物が154,000円です。当院の治療期間の目安は3〜4ヶ月で、骨を補う処置をした場合はさらに2ヶ月ほどかかります。
ブリッジや入れ歯を選ぶ場合も、保険適用と治療期間を聞いておく
歯を失った後の選択肢には、インプラントのほかにブリッジや部分入れ歯もあります。それぞれ保険適用の有無や治療期間、隣の歯を削る必要があるかなど特徴が異なります。
| 治療法 | 保険適用 | 周囲の歯への影響 | 外科処置・管理の特徴と主なリスク・副作用 |
|---|---|---|---|
| ブリッジ | 条件により適用あり(素材で自由診療も選択可) | 両隣の歯を削って支えにする | 外科手術は不要。支えの歯の清掃が必要。削った歯がしみたり神経の処置が必要になったりすることがある |
| 部分入れ歯 | 適用あり(素材・構造で自由診療も選択可) | 金具をかける歯に負担がかかる | 毎日の取り外しと洗浄、定期的な調整が必要。装着時の違和感や痛み、金具をかけた歯の揺れが出ることがある |
| インプラント | 原則として自由診療 | 隣の歯を削らない | 外科手術と、術後の定期的なメンテナンスが必要。手術に伴う出血・腫れ・痛み、神経損傷による麻痺、上顎洞炎、人工歯根が骨と結合しないこと、インプラント周囲炎などのリスク・副作用がある |
インプラント手術でとくに気をつけたい合併症は、下あごの中を通る神経をドリルで傷つけて起こるしびれです6。ほかに、上あごの空洞(上顎洞)にインプラントが入りこむことや上顎洞の炎症、インプラント周囲炎、思わぬ出血なども起こりえます6。診断を受けた後に各治療法の利点だけでなくリスク・副作用の説明も聞き、ご自身の希望に合う方法を選んでください。
家計と通院予定に組み込むには、見積もりと日程の何を見ればいい?
治療そのものの金額だけでなく、別にかかる費用も入れた合計と、通う回数に加えて傷が治るのを待つ期間を確かめておくと、思わぬ出費や通院を減らせます。
見積もりでは治療本体と別途費用を分けて確認する
見積もりを確認する際は、被せ物やインプラント本体だけでなく、事前の検査や土台、仮歯、調整の費用が含まれているかを確かめましょう。当院では、手術への恐怖や長時間お口を開けることへの不安がある患者様に、麻酔担当医による静脈内鎮静法(点滴でうとうとした状態にする方法)を選択肢としてご案内しており、これには別途費用がかかります。当院の麻酔管理料は110,000円です。鎮静の方法を選ぶときは、どんな体の変化が起こりうるかや、当日の帰り方・過ごし方を前もって説明してもらいましょう。
支払いの時期が一括か工程ごとか、クレジットカードやデンタルローンによる分割払いが利用できるかも、事前に歯科医院へ確認しておくと家計の見通しを立てやすくなります。
通院計画は来院回数だけでなく、治癒を待つ期間も確認する
当院のインプラント治療の通常の流れでは、一次手術で人工歯根を埋入した後、骨と結合するのを待ちます。結合を確認してからアバットメント(人工歯根と被せ物をつなぐ土台)を装着し、歯ぐきが安定するのを待って型を採り、人工歯を装着します。
このように、実際に来院する回数だけでなく、骨や歯ぐきの治癒を待つ期間も全体のスケジュールに関わります。たとえば自由診療のセラミック治療では1ヶ月・2〜5回程度で終わる症例もありますが、歯の内部の治療やインプラントでは期間が異なります。治療内容ごとに期間の目安を確認してください。
予算と通院できる曜日を書き出してから予約する
通院を途中でやめてしまう事態を防ぐには、無理のないスケジュールを組むことが大切です。当院へお越しの際も、ご自身の生活リズムや移動手段に合わせて、無理なく通院できる日時をご検討ください。
初診の前に次の項目をメモしておくと、検査後の相談がスムーズに進みます。
- 詰め物が外れたのはいつか、痛みや血が出たのがどう変わってきたか
- 1ヶ月あたり、または治療ぜんぶで出せるお金の上限
- 仕事やご家庭の予定と重ならず、通える曜日と時間帯
これらを整理したうえで、諦めずにまずは一度ご相談ください。
よくある質問
Q. 歯科医院で「5,000円程度かかる」と聞くことがあるのはなぜですか?
A. 初診で公的医療保険(3割負担)を使うとき、基本の初診料にパノラマレントゲンや歯周病の検査、応急処置などが加わることがあります。その場合、自己負担が3,000円〜5,000円前後になることが多いためです。5,000円と一律に決まっているわけではなく、行った検査や処置の内容によって金額は変わります。
Q. 親知らずの抜歯や歯科治療で嘔吐反射が強い場合、相談できますか?
A. お口に器具が入ると吐き気が出やすい(嘔吐反射)方や、歯の治療がとても怖い方は、予約や問診のときにお伝えください。一般的には、器具の当て方や休むタイミングを工夫したり、静脈内鎮静法でうとうとした状態で処置を受けたりする方法があります。
当院では、インプラント手術が怖い方や長く口を開けているのが不安な方に、麻酔担当医による静脈内鎮静法をご案内しており、麻酔管理料は110,000円です。選ぶときは、体への影響も含めて前もって説明を受けてください。
Q. 抜けたまま放置すると特に影響が大きい歯はどこですか?
A. どの歯も噛み合わせの役割を持っていますが、特に第一大臼歯(前から6番目の大きな奥歯)は噛む力を支える中心となる歯です。ここが抜けたままにすると、すき間に向かってとなりの歯が傾いたり、かみ合っていた反対側の歯が伸びてきたりして、歯並びやかみ合わせが乱れる原因になります。また、一番奥の親知らず以外の奥歯を失った場合も、残りの歯への負担が大きくなります。
参考文献
1. 歯のはなしVol.157歯を抜けたままにしておくと(3)歯が抜けると起こること1/丹波篠山市. https://www.city.tambasasayama.lg.jp/soshikikarasagasu/kenkoka/sikahoken/hanohanashi/hawonuketamamanisiteokuto/29206.html
2. Marcus K, Balasubramanian M, Short SD et al. Dental hesitancy: a qualitative study of culturally and linguistically diverse mothers. BMC public health. 2022. PMID: 36443774 / DOI: 10.1186/s12889-022-14513-x
3. Kalladka M, Markman S, Raman KR et al. Psychological Factors Determining Prognosis of Dental Treatments. Dental clinics of North America. 2024. PMID: 39244254 / DOI: 10.1016/j.cden.2024.05.006
4. インプラント – 歯とお口のことなら何でもわかる テーマパーク8020. https://www.jda.or.jp/park/lose/index19.html
5. 歯科・口腔外科|呉医療センター中国がんセンター(広島県呉市、病院). https://kure.hosp.go.jp/department/dentistry/
6. より安全な口腔インプラント手術 | KOMPAS – 慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト. https://kompas.hosp.keio.ac.jp/presentation/201402/
7. 東北大学「稀有な免疫細胞による骨再生の促進を発見 ―口腔粘膜… | プレスリリース・研究成果」 https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2026/06/press20260623-04-gingiva.html
1997年~2000年 日本大学歯学部口腔外科 在籍
2000年~2002年 グリーン歯科 勤務
2002年~2007年 しらさぎ歯科医院 院長
2007年5月 ココ歯科クリニック 院長
あわせて読みたい関連記事
